【北アルプス登山】白馬三山

高山植物を見に行くなら白馬岳と山ヤの間では言い習わされているほど様々な種類の花が見られることが特徴の山岳です。高山植物の時期は早くまだ雪渓が多く残る7月上旬〜中旬頃が見頃となります。この時期は雨も多く雪渓の状態があまり良くないこともあり、初心者には注意が必要な時期でもありますよ。今回は白馬岳だけではなく白馬三山と呼ばれる後立山連邦の稜線歩きを楽しめるコースを歩きます!

登山コースの概要

登山レベル ★★★★★
 コース

1日目 猿倉-双子岩-白馬鑓温泉-天狗山荘

2日目 天狗山荘-白馬鑓ヶ岳-杓子岳-白馬山荘-旭岳ピストン

3日目 白馬山荘-白馬岳-小蓮華山-白馬大池-天狗原-栂池ロープウェイ

立寄り湯 八方の湯

コースタイム

1日目 7時間50分 

2日目 4時間30分

3日目 6時間

距離

1日目 8.5km 

2日目 6.5km

3日目 9.2km

往路アクセス バスで白馬八方バスターミナルから猿倉
復路アクセス バスで栂池から白馬八方バスターミナル
山と高原ホーダイappより引用
山と高原ホーダイappより引用

1日目

起点は白馬八方バスターミナルから。6:00猿倉行きのバスに乗り込みます。朝のうちは白馬三山がスッキリと見えています。左から白馬鑓ケ岳、杓子岳、白馬岳と並んでいますよ。

ちなみに白馬八方バスターミナルは温泉施設あり、コンビニあり、ソロOKな宿泊施設有りと登山者には嬉しいスポットです。夜行バスが満席だったのでバスターミナル隣の白馬ベルグランドさんで前泊しました。ゆっくり眠れたので朝から絶好調です。

 

白馬八方からバスで20分ほど移動すると登山口の猿倉となります。山荘前はとても賑わっていますがほとんどの登山者は大雪渓を目指します。15分ほど歩くと白馬鑓温泉と大雪渓の分岐となります。見落とさないように注意です。分岐から少し行くと緩やかな登山道となります。歩き出しはのんびりと。今日の調子を見ながら歩きます。

1600m付近から登山道の様子が変わります。トラバース道となり道幅もせまく木の根の張り出しや濡れた岩で少し歩きづらく変化します。とはいえ整備されているのでそこまで苦労はありませんでした。

小日向のコル付近からお花が目立ちはじめます。ニッコウキスゲ、ウツボグサ、ミヤマキンポウゲ、オウレンなどが登山道脇を彩ります。コルは広く休憩にはちょうど良いスポットとなります。歩きはじめて3時間、行動食を食べゆっくりと休憩を取りました。

小日向のコルから80mほど降るとカエルの鳴き声がにぎやかな池に到着します。その先から登山道が荒れてきます。小さな雪渓や沢の流れ込みを越えながら進みます。登山道は傾斜のある砂利道となります。下草が登山道を見えづらくしているので踏み外さないように注意が必要なポイントでした。

白馬鑓温泉直下の雪渓です。ここで初めて軽アイゼンを装着しました。カラカラと石が滑り落ちていく音がします。小さな落石があったようです。雪渓を見るとそこそこのサイズの石も落ちていました。小屋までの雪渓の登り以外ときついです。

白馬鑓温泉に到着です!温泉の匂いが「泊まっていきなよ」と誘います。温泉は混浴の露天風呂と小屋掛してある女性専用の2つです。20時〜翌9時は露天風呂が女性専用に小屋掛してある方が男性専用になりますよ。昼間堂々と入るのが恥ずかしい女性の方は夜にこっそり入ってみてはいかがでしょうか?

さて、今日の天気予報はくもりか雨、午後に雷雨が予想されていました。稜線の天狗山荘に行く前に雷ナウキャストをチェックします。注意報は静岡や山梨方面に出ていて長野北部はまだ大丈夫。予定通り天狗山荘に向かうことにします。ここで注意報が出ていたら宿泊先を白馬鑓温泉に変更するか、しばらく待って雷雨をやり過ごすことを考えていました。


小屋を出発するとすぐに急登です。クサリ場3ヶ所を通過します。しっかりしたクサリが着いていますが、足元が滑りやすい。濡れていると滑る蛇紋岩質な石が露出しているようです。クサリを両手で掴むのは身体が振れて危ないので片手はクサリ、もう片手は岩を掴みましょう。危険な箇所はそう長くありません。落ち着いて通過すれば大丈夫。

チングルマのお花畑や〜!大出原からは傾斜が緩やかになります。お花があちこちに咲き乱れ、ダケカンバやナナカマドが目立ちます。9月下旬ともなれば紅葉の穴場になるスポットです。ここから稜線に上がるにはまだ2時間ほどかかります。気づけば雲が厚くなりはじめてきました。雨に降られる前に天狗山荘に到着したいところです。

天狗山荘の前には雪渓が横たわっています。滑ると危ないのでストックを一本出して渡りました。小屋に入る前から雨がポツポツと降りはじめ、到着した1時間後には土砂降りの雨。夜間は激しい雷がありました。昼間に荒天に遭わなかったのは助かりました。

・天狗山荘について
白馬村村営の山荘です。1泊2食13000円。山小屋の規模がちょうど良く寛げる場所でした。天狗山荘オリジナル日本酒が1合700円で楽しめます。水は雪解け水を塩素消毒しています。塩素臭は気になりませんでした。夕飯はお米がとてもよく炊けていて美味しい。気圧が高い場所だと炊くの難しいんですよ。特筆すべきは自炊室が綺麗なこと、水道もあるので食料を担ぎ上げて自炊するのも良いかと思います。

2日目

明け方まで降り続いた雨が上がりました。天狗山荘で言葉を交わしたグループは不帰キレット方面へ行くことを決めていました。雨が降らなければ良いなと天を仰ぎます。稜線に出ると重たい雲が掛かっていますが下界は晴れている様子。束の間の朝日を楽しみます。

この辺りの稜線にはウルップソウが咲いています。本州では白馬周辺と八ヶ岳にしか見られない珍しい花です。すでに花の時期が過ぎた株が多い印象でした。今年は梅雨明けが異常に早く北アルプスの花たちは1、2週間ほど早く咲きはじめている…、そんな感じがしています。とはいえ、ここ数年そういう年が続いているのでお花は6月末〜7月上旬がベストシーズンになっています。温暖化が進んでいますね。

雨。そしてガス。白馬鑓ケ岳を越えた辺りでレインウェアを着込みました。天狗山荘で顔を合わせたグループと再開しました。白馬大池まで行く予定だそうですが、一人方の登山靴のソールが片方剥がれています。ビニール紐で縛り、外れないようにチェーンスパイクを履いていました。初日の登りも難儀していた様子を見ているので装備と体力が心配だなと思いながら別れました。

富山側のガスが消えました。雨上がる。レインウェアを脱いでゆっくりと休憩を取ります。山中3日間はいずれも曇りもしくは雨予報なので一瞬の晴れ間がご褒美です。白馬鑓ケ岳から白馬岳までは危険な場所がほぼなく安心して歩ける場所です。お花はミヤマダイコンソウ、ミヤマオダマキ、アオノツガザクラ、コケモモ、コマクサが見られました。ガスでも植物が楽しめるのは有難いですね。

朝のうちに白馬頂上宿舎に到着しました。天気が良ければ清水岳(しょうずだけ)のピストンを予定していましたが、どうも天気が微妙です。雷ナウキャストをチェックすると富山方面に注意報が出ています。1、2時間程度なら大丈夫そうです。ザックを宿舎にデポして旭岳に向かうことにしました。

頂上宿舎の裏手からこの雪渓までがお花畑になっていました。白馬岳周辺は本当に高山植物が豊かです。さて、目の前の小ピークが旭岳です。平らかな雪渓を越え、トラバース道を少し歩きます。登山道はないので地形図を見ながら登れそうな取付きの尾根へ向かいます。

登っていくと踏み跡がわずかにありました。ペンキマークは一切ないので地形図と実際の地形を確認してから登っていきます。取付きからピークまで20分もかからずに到着しました。辺りを探しても山頂標のようなものはありません。真っ白で何も見えないので降ります。登りは簡単ですが降りは注意が必要です。北側の砂礫に降りて行かないように来た道を忠実に辿ります。

あ、真っ白。
ガスに巻かれました。視界20mほどでしょうか。雪田は平らで地形が読めず、ベンガラも途中で薄くなってしまっているので念のためコンパスで進行方向を割り出してから進みました。

少し早いですが天候もすぐれないので頂上宿舎に戻ってゆったりと過ごします。カフェのワインセット1200円でほろ酔いしながら本日は終了。

・白馬頂上宿舎について
天狗山荘と同じく白馬村村営の小屋です。名物は夕食のビュッフェ!デザートのケーキも食べ放題です。小谷漬けという郷土料理もメニューにありました。特筆すべきは郵便が出せること。高山の稜線から旅の思い出にハガキをしたためるのも一興ですね。残念な点は自炊室がないことです。受付奥にベンチが一つありますが室内でバーナーを使用して良いのはそこだけです。頂上宿舎は自炊より食事付きがオススメですよ。

3日目

最終日は暴風…。
下界の天気は9時頃、一時回復しそうです。稜線の縦走をやめて大雪渓を降る人もちらほら。とりあえず稜線まで上がってから判断することにしました。濃霧がしっとりと肌にまとわり着きます。稜線の風速は10m弱。行けそうです!レインウェアをフードまで被り風除けをして進みます。

三国境まで来ると地形的に風が吹き弱ります。雨が降ってないことが救いです。途中で雷鳥のお散歩に出会いました。天気の悪い日は雷鳥を見れる確率が上がります。

小蓮華山を越えると天候が回復。北アルプスの稜線歩きが楽しめます。白馬大池までは緩やかな降りです。白馬大池山荘から池のフチをたどって歩いていきます。大きな岩のゴーロ地帯ですが安定しているのでバランスが取れていれば難儀しないかと思われます。

 

ゴーロを抜けた先、乗鞍岳の山頂には大きなケルン塔があります。辺りはハイマツに覆われたなだらかな地形です。今は登山道が見えているので安心ですが雪がある時は迷いやすそうです。ここまでは問題なく夏山歩きが出来る道となります。


問題の解け残り雪渓です。天狗原までは3箇所ほど雪渓を越えていきます。傾斜30度近くある場所はアイゼンを着けますが腐った雪に爪が刺さらず滑り落ちて行く人がいました。幸いスピードが出ずに岩に当たって止まったので無傷でした。そして、時折ズボっと雪が抜けます。薄い雪が被った岩の隙間に足を置いてしまうと片足が吸い込まれるという具合です。高山植物が見頃のときは腐った雪渓が案外と危険です。最初の雪渓で滑った人は次の雪渓も滑り落ちていったので、そもそも技術的な問題もあるようにお見受けしました。


天狗原までくれば雪はありません。池塘の風景が楽しめる場所です。しかし、この先がまだ長い。そこそこの急坂を1時間降りねばロープウェイまで着きません。栂池平には2件の山小屋がありソフトクリームなどの販売もあります。一息ついてからロープウェイとゴンドラを乗継げば20分で下界に到着です。

栂池からはアルピコバスが1時間に2〜3本出ています。白馬駅、白馬八方バスターミナル、長野駅方面に向かえます。栂池の温泉施設が廃業となったので白馬八方バスターミナルから徒歩1分「八方の湯」へ立ち寄りました。

まとめ

岩の隙間に咲くシコタンソウ
岩の隙間に咲くシコタンソウ
白馬三山の稜線は危険箇所が少ないですが稜線を外れると登りや降りが厳しい場所もあります。また高山の花は早く雪渓が残る時期が見頃となるので軽アイゼンは必携です。アイゼンを正しく使う技術も必要となりますよ。秋になれば大雪渓以外はアイゼンが不要。天候に恵まれると立山や剱岳を眺めながらの天空の山行が楽しめます。稜線の縦走は天候に大きく影響を受けますので荒天時はコースの変更や停滞など柔軟に対応することが大切です。

それではまたどこかの山で!