【箱根 日帰り登山】おすすめしない!矢倉岳から鳥手山

登山初心者の方は昭文社の山と高原地図を愛用されているかと思います。山と高原地図は赤ピンクの破線で記されている部分は歩きづらい熟達者向けのルートとなっています。今回は一般ルートと破線ルートでは登山道はどう変化するのか。その危険などをレポートします。

 

登山口は地蔵堂となります。こちらへのアクセスはJR小田原駅から大雄山線に乗り換え、大雄山駅より地蔵堂行きのバスとなります。

矢倉岳は関本〜矢倉岳〜地蔵堂もしくは関本〜矢倉岳〜万葉公園のルートが一般的で途中の関本のバス停でほとんどの登山者が下車していきました。終点地蔵堂で下車したのは私含め2名だけでした。

目の前に矢倉岳がほっこりとした山容でお迎えしてくれます。登る前にお目当ての山の姿を確認すると、これからあそこに行くぞ!と気合が入りますね。

山と高原地図ホーダイappより引用
山と高原地図ホーダイappより引用
アプリで確認すると地蔵堂から矢倉岳は一般ルートとなっています。こちらは利用する人が多いので難易度は高くないと思いますが、ネットで調べてみると矢倉岳から地蔵堂に下山する途中に作業道に迷い込んだという情報が数件確認されました。里山は林業道が多いので注意しながら歩かないと登山道を外してしまうことが多いのです。

バス停から県道78号線を横切り畑に下ります。きちんと道標が設置されていました。スミレやカキドオシ、キランソウなどの小さな花が足下にちらほら咲いています。春ですね。

沢の渡渉があります。小さな川ですが雨が降れば増水しますのでこのルートは雨の日は避けた方が良いと考えられます。上で引用した山と高原地図には渡渉があるとは書かれていません。わずかな渡渉は省略されて書かれない事もありますが等高線をよーく見ればこの部分が沢地形になっているのがわかります。

ちなみに地形図で確認すると沢がきちんと書かれています。山と高原地図地図では利便性を高める為、細かな情報が省略されているのです。

針葉樹の植林帯を歩きます。この辺り登山道はちゃんと通っていますが広尾根です。ネットで道迷いされた方はこの辺りがわかりづらかったのでしょうか?初心者目線であたりをキョロキョロしてみます。

鉄塔を通る。地図読みをするときこのような人工物がある場所を選ぶとやり易いです。上の地形図を見て何度鉄塔の下を通るか分かりますか?


3

2

1

トゥン

正解は4回です。

万葉公園、地蔵堂、矢倉岳の分岐にはきちんと道標が立っています。この先から矢倉岳山頂までは急登となります。

急登から道がなだらかになった後、山頂となります。相模湾、箱根外輪山、愛鷹連邦、富士山が見渡せます。本日の富士には雲がかかっておりました。富士駐屯地の演習で打った空砲の煙が空に棚引いているのも見えます。ここでのんびり休憩しました。山頂は広場となっているので登山者はめいめいゆったりとくつろいでいます。

山伏平まで戻ります登山道には虎ロープが貼られ一般登山者が入らないよう制限されています。

山と高原地図ホーダイappより引用
山と高原地図ホーダイappより引用

これより山伏平から北にある鳥手山を目指します。地図は破線で描かれていますね。

山と高原地図の難路の説明を引用すると"岩稜やヤブなどを含んだ経験者向きの登山道(中略)難路には荒廃の激しい登山道、あるいはバリエーションルートなども含まれております。"とあります。

さてさて山と高原地図からこの先のルートがどうなっているか読み取れるでしょうか?尾根道のアップダウンが続いて東に尾根の方角が変わるときトラバースの道に変わります。

それでは難路へGOです。

東に尾根が折れるあたりで登山道はなくなり、尾根も広く方向感覚が曖昧になります。こういう場合は手前のピークで方角をコンパスで割り出してから進みます。

このあたりを地形図で確認してみましょう。山伏平から地図記号は徒歩道ではなく市を分ける境界線が引かれています。すなわち道はないということです。

こうなってくると山と高原地図では歯が立ちません。地形図を持っていないと歩けない場所となります。GPSアプリでも何とかなりそうですが、誤作動したりバッテリーが切れてしまうと道がわからなくなる危険性がありますね。

819.1に地図記号の三角点があります。そこが次の目指すピーク鷹落場です。しかし、そこに到達する前に、先ほど東に曲がった尾根が北東に変わりさらに尾根が広くなります。方角の割り出しと距離の測定が必要となってきます。

鷹落場の二等三角点です。地図記号三角点のある場所には必ずこの石柱が埋まっていますので地図読みではとても重要となります。

鷹落場から先は押立山、鳥手山へと向かいます。押立山はなだからなピークで三角点もなさそうです。押立山のピークから鳥手山への下降点を探します。

一体どこに行っていいのだか分からない広尾根から正解に方角を割り出します。間違ったと思ったら引き返して現在地がわかる場所でもう一度角度の割り出しを行います。

先輩ガイドから「登山は大胆に、地図読みは繊細に」と言う教えを受けたのでこれを忠実に守っています。

押立山の手前に「鳥手山こちら」とのお手製の案内板が掲げられていました。

押立山のピークあたりです。何もありません。ここから先ほどの案内板まで戻る手もありましたが、このピークから直接鳥手山に接続する尾根に降ることにしました。地形図から傾斜度を測ります。30°未満であれば私はロープなしで下降できますので行くことにしました。

斜面を降りだすとかなり地面が柔らかく足首まで埋まります。カカトステップで降り切ったときは登山靴にかなり砂が入り込んだので履き直しました。素直に案内板に従えば良かったのかもしれせん。その先もわかりづらい下降点を判別して進みます。


鳥手山の手前は急登です。道なき斜面を地道に登ります。

お手製の山頂案内がありました。ピークは樹林帯の中で眺望はありません。


この先のコース取りですがわかりづらいので赤の破線で追記しました。鳥手山から北の徒歩道に接続し、弓形に曲がりながら595ピークのトラバース道を通るというルートです。トラバースはかなり急傾斜地ですが、山と高原地図のルートは基本的にロープなしでいけるものを載せているので道があればいいなという期待を込めて進みます。

広尾根は地形図で現在地から何百m歩いたかを近似値で把握しないと下降点が割り出せません。自分が歩いた距離を把握してここが下降ポイントだという場所で方角の割り出しを行います。

私は赤破線のコース取りをしましたが、青破線のコース取りもありですね。青破線は尾根の張り出しと谷地形が明瞭なので幾分歩き易いかと思います。

徒歩道が描かれている場所には道はありませんでした。合流点を探しましたがすでに自然に飲まれたようです。道の描かれていた付近が広葉樹と針葉樹の境目となっていましたので道の痕跡がないかなと思いながら595の北側のトラバース道を目指します。

トラバース道を発見しました。ちゃんとした登山道として機能しているようなので予定通りこちらを歩くことにしました。さきほど押立山の降りで強引にいって登山靴が砂まみれになりましたので、反省して道のある場所を歩きます。

だめだ。道が崩れている。

最初はかなり安定したトラバース道でしたが進むにつれ道は崩壊路となりました。595ピークから降るルート取りをした方が安全だったかもしれません。急斜面を注意しながら進みます。

ふたたび地形図を確認します。トラバース道を抜けた後は広尾根となり、その先の尾根道は比較的わかりやすい地形となっています。下山口の酒水(しゃすい)の滝も見えています。

プレハブ小屋がありました。この先から林道と行っても過言ではないほど道幅は広く整備され、轍(わだち)もついていました。登山道として作られているわけでなく作業道として作られている道ですね。林道になり舗装路になりやがて集落へとたどり着きます。

登山道の案内標識は一切なく道路へと降りました。

酒水の滝です。ただいま工事中で滝の下まではいけません。遠くから眺めてもかなりの落差があり美しい滝ですね。

酒匂川を越えて山北駅まで戻りました。駅はそこそこ混んでいます。大野山の帰りでしょうか。

・まとめ

山と高原地図だけでは今回の難路は歩けないというのが結論です。まず実線か破線の2パターンでしか難易度を把握できません。北アルプスの穂高連邦の難路は岩稜地帯特有の難しさがありますし、低山では今回のように広尾根で進行方向が分かり辛い場合もあります。また難易度の程度にもバラつきがあります。そこを考慮した上で破線ルート歩く技術が必要となります。なので初めてチャレンジする場合は熟達者と同行するなど安全対策を行ってください。


それではまたどこかの山でお会いしましょう!