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「火を焚きなさい」山尾三省(著)

流れ流れて山尾三省と出会う。昨年11月に文学フリマに行きました。文学フリマはプロ、アマ問わず文学作品が発表できるフリマーケットです。あるブースでリソグラフという手法で刷られた本を見つけました。東横線の本屋さんが出店されていたブースでした。そんなご縁で、そのあとお店の方へ伺ったのです。一般の本屋に並ばないような書籍が置かれ、壁面には絵が展示されていました。棚の一つに面陳(めんちん)された本に目が留まりました。ディープグリーンの表紙にオレンジの配色が映える一冊の詩集を手に取ってページを繰るうちに、すっかりその世界観に心を囚われました。そんな山尾三省との出会いでした。

 

"ひとりの男が

 

まことの歌を胸に探り

 

この世の究極の山へ登り入った

 

山は深く

 

雨さえも降り

 

実は

 

淋しい登山であった

 

同伴者がいなくはなかったが

 

真の同伴者は己一人

 

まことの歌をうたうものでしかなかった

 

それがまことの歌なのか

 

まことらしき歌なのか

 

明確でないところに

 

この登山の困難があった"

 

 

山尾三省「火を焚きなさい」歌のまことより引用