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【飯能アルプス 日帰り登山】 伊豆ヶ岳から子ノ権現

西武秩父線に揺られ蝋梅(ろうばい)の咲く2月末、秩父の伊豆ヶ岳を登りました。
正丸駅前
正丸駅前

西武秩父線の正丸駅を降り、駅前で登山準備を済ませてから歩き出します。伊豆ヶ岳は駅から登山が出来る便利な山なのです。飯能アルプスの一番北に位置し、この日もそこそこの登山者の姿がありました。駅隣接の駐車場はほぼ埋まっています。新緑の季節にはもっと多くの人で賑わうのでしょうね。

 

正丸峠と長岩(亀岩)分岐
正丸峠と長岩(亀岩)分岐

線路の下をくぐり民家の横を道を歩きます。大蔵川と呼ばれる沢がとなりを流れています。20分ほど歩くと正丸峠と亀岩ルートの分岐へとたどり着きます。この場所で何人かの登山者は衣服調整をしていました。ウォーミングアップに良い感じの距離でした。ちなみに正丸峠は現在の正丸峠と旧正丸峠のふたつがあります。旧正丸峠は江戸と秩父を結んでいた要所だったそうです。県道53号線から旧正丸峠の谷筋の道が残っているようなのでいつか訪れてみたいですね。当時の面影を感じられるといいのですが。

 

分岐を過ぎると左手に沢を見ながら針葉樹林を進んでいきます。整備された道で道標もしっかり立っています。道標には「名栗げんきプラザ」とあります。これから山頂を目指す途中にそんな施設があるのかなと思いました。登山地図を確認すると尾根を乗り越え降った先に施設がありました。地形図には建物名が書いていませんが登山地図には載っていたりするので両方持っていくと便利です。

 

長岩(亀岩)
長岩(亀岩)

ふたご岩と書かれた道標を過ぎると沢から離れて短い九十九折れの道に入ります。ふたご岩を最初は見逃していましたが、少し歩くと下の方に仲良く二つ並んだ岩が見えました。とても大きな岩でした。どうやってここに運ばれてきたのでしょうか。気づけば目の前に大きな岩塊が見えました。道標には「亀岩」とあります。標高660m付近まで登ってきたようです。亀岩の下部は赤色をおびていてチャートが混じっていそうです。

 

道はやがて尾根道に達しました。左手に立木に囲まれたピークが見えます。地形図とコンパスで確認すると伊豆ヶ岳の山頂とわかりました。登山地図では「眺望が良い」と書かれていましたがどんな山頂になっているのでしょうか。尾根道は正丸峠の道と合流します。なだらかで歩きやすい道です。

 

 

閉鎖中の男坂
閉鎖中の男坂

 伊豆ヶ岳の手前には五輪山があります。登山地図にも名前が載っていないピークです。登山道が荒れているとの注意書きがありました。今日はまき道を歩くことにします。伊豆ヶ岳の山頂に至るには男坂と女坂がありましたが、現在は道が崩れて使用できません。代わりの新しい道ができています。その名も「男坂と女坂の中間にあるみち」です。そのままです。山頂の手前はザレ場でちょっと急ですが難所と言える難所はありません。

 

伊豆ヶ岳山頂より
伊豆ヶ岳山頂より

伊豆ヶ岳の山頂からは都心部が見えました。広葉樹に囲まれているので夏の時期は眺望がすこしさえぎられるかもしれませんね。

 

露岩と広場があります。めいめいにお弁当を広げてくつろいでいます。私もビスケットをかじりコーヒーを頂きました。座った場所の岩は赤くなっています。伊豆ヶ岳の山頂はチャートで出来ているため赤みを帯びているのです。チャートはプランクトンの死骸が堆積してできた層です。伊豆ヶ岳は秩父古生層という2億年前までは海の底だった場所が隆起して出来た山となっています。チャートでつくられた山は険しくなりやすいという性質があります。同じく秩父にある両神山もチャートで出来ており八丁尾根は難所となっています。この伊豆ヶ岳はあまり険しさを感じませんでした。閉鎖されていた険しい男坂を登っていたらもっと印象が違っていたと思います。

 

伊豆ヶ岳から古御岳に向かう尾根道
伊豆ヶ岳から古御岳に向かう尾根道

安心しきって伊豆ヶ岳から子ノ権現へ向かう尾根道を歩き出すと山頂の直下は急傾斜となっていました。緊張感を持ちつつ降ります。整備された登山道ですが山頂から250mちょっと降りてくると立ち木に赤いテープが巻いてありました。これは逆方向からくると誘い込まれるテープだなと思って地形図を眺めます。尾根をいくと上久通林道に接続しそうです。赤テープに助けられることもありますが、赤テープにより迷うこともあります。このテープはここから左に折れるの合図のようですが、そのままこの尾根を歩けとも受け取れそうなテープでした。

 

古御岳を通り過ぎたところで違和感を覚えたので地形図とGPSを確認します。地形図よりも実際の登山道は東側を通っていました。地形図はあまり更新されないので登山道が作り替えられ地形図と合っていないことが多々あります。

 

高畑山のピークは樹林帯の中でした。ベンチがあり休憩スポットとなっています。伊豆ヶ岳を過ぎるとその先はずっとアップダウンが続く尾根道となります。針葉樹林が目立つので眺望はいまひとつですが、夏山に向けてのトレーニングに使うとちょうどよい感じがします。

 

このあたりから私の前を先行している80歳に手が届きそうな年配登山者がおられましたが、ちょっと惹かれるものがあったのでしばらく後ろを歩いていました。降り方がとてもきれいで私も歳を重ねたときにこういう風に山を歩きたいと感じる人でした。高山に登れない年齢になったら、あちこちの里山を日帰りで楽しむ。登山は一生続けられる趣味だな。そんなことを考えながらのんびりと早春の山歩きをしていました。

 

面白いカタチの送電線が目の前に現れました。なんとなく鬼の面のように見えるフォルムです。せっかくなので開放地から見える山を山座同定します。棒ノ折山が見えています。棒ノ折山はゴルジュの登山道が見どころの山です。いつかの夏に登山道わきにぽつりぽつりと控えめに咲くハグロソウを見た記憶が思い出されました。

 

その後も登山道のアップダウンが続き、天目指峠(あまめざすとうげ)にたどり着きます。このあたりから子ノ権現の鐘の音が聞こえてきましたのでとても近くに感じますが実はその先小一時間ほどは歩きます。

 

子ノ権現の大わらじ
子ノ権現の大わらじ

子ノ権現(天龍寺)に到着しました。武蔵野三十三観音霊場32番札所となっています。足腰を守護する権現様を祀るお寺として有名です。境内にある大わらじは、その重さなんと2tです。

 

鐘楼の脇にたたずむ十一面観音
鐘楼の脇にたたずむ十一面観音

本堂の裏を登ると階段がありその先に鐘楼があります。天目指峠で聞こえてきた鐘の音はここから届いていたのです。とても大きく立派な鐘でした。そのわきに石仏がそっとたたずんでいます。十一面観音です。小さな頭が石仏に乗っているのと、右手に花瓶を持っているのが特徴です。

 

ふと気づくと観音様の後ろに小さな札が掲示されています。「経ヶ峰640m」とあります。どうやらここも山頂だったようで思わぬピークを踏みました。

 

この場所には展望台もあり、「東京スカイツリー眺望処」と看板が出ています。すこし霞がかり肉眼では厳しいのでザックから双眼鏡を取り出して探します。点滅している細長い塔を確認しました。東京スカイツリーと認定します。そんなことをやっていたら案外と時間が経っていました。今日の山行にはまだ目的があるのです。境内から出て舗装路、そして九十九折の登山道へと入っていきます。

 

風情漂う浅見茶屋
風情漂う浅見茶屋

目的地の浅見茶屋に到着しました。名物のうどんを楽しみにここまで歩いてきたのです。店内に入り案内を待ちます。肉汁うどんをお願いするつもりが、もう品切れでした。とり南蛮汁うどんを冷で頼みます。レトロな店内に立派なひな壇がありました。七段飾りの大きなひな壇。手作りのひな人形を飾るひな壇。よく見ると可愛らしい小さな手形とお雛様がセットになっている手作り雛がありました。どんな女の子でしょうか。健やかに成長することを願います。

 

とり南蛮汁うどんの冷
とり南蛮汁うどんの冷

そして待つこと20分。お目当てのうどんが運ばれてきました。なんとなく鴨南蛮っぽいものを想像していたのですが、まん丸のつくねが乗っています。あつあつのうちに頂きます。腰の強いうどんが甘辛いつゆと合っていておいしいです。つくねの軟骨のコリっとした触感を楽しんでいるうちに食べ終わりました。待っているより食べた時間の方が短いのではないでしょうか。うどんは儚い。おいしいものは一気に食べてしまいます。ポットでお茶をサービスしてもらっているので子ノ権現と書かれた湯のみを片手に食後はしばらくゆっくりと。

 

山旅の醍醐味はピークハントとあわせてグルメに温泉ですね。夕暮れになる前に吾野(あがの)駅を目指して歩き出しました。駅までは舗装路なので日が暮れても安心です。駅の食堂の前のベンチでグループ登山の方々がビールで乾杯をしていました。トレイルランナーのグループもいます。伊豆ヶ岳はトレーニングもできてグルメも楽しめる良い山でした。


それでは、またどこかの山でお会いしましょう!

 


登山レベル ★★☆☆☆
 コース  正丸駅-伊豆ヶ岳-高畑山-天目指峠-子ノ権現-浅見茶屋-吾野駅
コースタイム 5時間40分
距離 12.4km
往路アクセス 西武秩父線 正丸駅
復路アクセス 西武秩父線 吾野駅